神戸地方裁判所 昭和58年(わ)927号 判決 1984年2月27日
本店の所在地
兵庫県尼崎市潮江四丁目四番一号
法人の名称
株式会社中島商店
代表者の住居
兵庫県尼崎市塚口町六丁目三八番地の二
代表者の氏名
中島義博
本籍
兵庫県尼崎市名神町三丁目四九番地
住居
同市塚口町六丁目三八番地の二
職業
会社役員
中島義博
昭和一八年二月二二日生
右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官村上秀夫出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社中島商店を罰金一、三〇〇万円に、被告人中島義博を懲役一年に各処する。
被告人中島義博に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告法人株式会社中島商店は、兵庫県尼崎市潮江四丁目四番一号に本店を置き、果実類の卸売及び小売業等を営むもの、被告人中島義博は、被告法人の代表取締役として業務全般を統括しているものであるが、被告人中島義博は、被告法人の業務に関し、法人税を免れようと企て
第一 昭和五四年一〇月一日から同五五年九月三〇日までの事業年度における所得金額が五、〇〇一万九九六円で、これに対する法人税額が一、九一六万四、〇〇〇円であるにもかかわらず、売上の一部を除外し、架空の仕入れを計上するなどの行為により、その所得を秘匿したうえ、同五五年一一月二九日、同市西難波町一丁目八番一号所在の所轄尼崎税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得及び納付すべき法人税がない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の法人税一、九一六万四、〇〇〇円を免れ
第二 同五五年一〇月一日から同五六年九月三〇日までの事業年度における所得金額が四、六二五万一、二八五円で、これに対する法人税額が一、八四六万五、四〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿したうえ、同五六年一一月三〇日、前記尼崎税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六八五万九、〇九四円で、これに対する法人税額が二〇五万七、七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の法人税一、六四〇万七、七〇〇円を免れ
第三 同五六年一〇月一日から同五七年九月三〇日までの事業年度における所得金額が八、八一三万七七二円で、これに対する法人税額が三、六〇五万四、六〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿したうえ、同五七年一一月二九日、前記尼崎税務署において、同税務署長に対し、所得金額が八六四万九、一七二円で、これに対する法人税額が二六七万二、五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の法人税三、三三八万二、一〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部につき
一 被告人中島の当公判廷における供述
一 被告人中島の検察官に対する供述調書
一 中島祥代の検察官に対する供述調書
一 法人税確定申告書謄本五通
一 大蔵事務官(大阪国税局収税官史)作成の査察官調査書一六通
(法令の適用)
被告人中島の判示第一の所為は昭和五六年法律第五四号、附則第五条により、法律同号による改正前の法人税法一五九条一項に、判示第二、第三の各所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当するので、各罪につき懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条にしたがい、刑及び犯情の最も重い判事第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人中島を懲役一年に処し、なお、同法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
被告人中島が代表者である被告法人・株式会社中島商店に対しては、被告人中島の関係で挙示した前記改正前及び改正後の法人税法一六四条一項、一五九条一項により、その所定の罰金刑につき、刑法四五条前段、四八条二項にのっとりこれを合算した額の範囲内で罰金一、三〇〇万円に処する。
(量刑の事情)
本件は、三事業年度にわたり合計約六、九〇〇万円の法人税を逋脱した事犯であり、その逋脱額の程度、犯行の態様等に徴すると、相応の厳正な刑事的制裁をまぬがれないというべきであるが、被告会社の場合、同業者との競争が熾烈であるのに、取引上の立地条件に恵まれないため、得意先の確保におくれをとり、しかも、洋菓子業界の先行不安の影響から将来の不況に備えるべく本件脱税に及んだものであること、既に修正申告のすえ本税・加算税・延滞税等を納付しているほか、経理担当の事務員を充実し再犯防止の体制づくりを行っていること等諸般の事情を総合考慮し、主文のとおり量刑した次第である。
(裁判官 角谷三千夫)